インドの中央銀行として扱われていたインド準備銀行が4月の5日、国内の各金融機関に対して仮想通貨に関連する取引を個人や法人相手に行うことを禁止しました。
インドはこれまでも仮想通貨規制を徐々に行ってきており、今回ついに禁止の流れになりました。ただし、仮想通貨に欠かせないブロックチェーンの技術については金融関連の効率化と言う点から活用できるという意見もあるようです。
インド独自の仮想通貨発行についてはとても意欲的な姿勢を持っています。
今回の禁止のきっかけとなったのは、マネーロンダリングの懸念やボラティリティーによる資産の損失などです。どちらかと言えば現金志向が強いインドですが、政府は以前からマネーロンダリングや脱税などに悩まされる日々を送ってきました。
こういった不正行為が多いことからインドの仮想通貨取引所に税務調査が入ったこともありました。
また、インドでは実際にキャッシュレス化を目指しており、高額紙幣の廃止なども行われましたが、その影響から一時的に不況に陥ったこともあります。
そして今回、仮想通貨の盗難事件やマネーロンダリングの懸念から今回仮想通貨の公的使用を完全に禁止という結果になりました。
暗号通貨取引禁止にともなう影響とは?
しかしこれに対して署名収集サイトであるchange.orgでは署名活動が行われています。
この請願書はインド政府にブロックチェーン及び仮想通貨業界への支援を求めるものです。ブロックチェーンやその関連企業で働いている若者が何万人と存在しているインドに於いて、仮想通貨の取引を禁止することは雇用の面でも致命的であり、未だ失業率が改善できていない政府にとっては極めて重大な事実であるとしています。
この署名活動はインドでもとても注目されており開始からわずか4日で既に17,000件もの署名が集まりました。
インドは失業者が多いため、雇用できる企業がなくなってしまうのは政府にとっても痛手であり、国民もそれを望んでいないようです。
また、仮想通貨の取引を全面的に禁止することが余計に不正取引やマネーロンダリングを増長させる結果につながると言う意見も多く上がっており、多くの議論をした上で判断を下さなければ仮想通貨市場や政府にとってもマイナスの影響与えることとなり得ると反対派は主張しています。
今回の仮想通貨取引の禁止の判断はあまりにも議論足りないとされており反対意見も多くあるようです。
さらに、請願書の内容にはブロックチェーン技術の必然性についても指摘しています。
「世界的にもブロックチェーンの技術は需要と可能性があり、仮想通貨とブロックチェーンの進歩は止めることができないことである。全力でそれに参加するのか、遅れをとるのか、どちらかしか選択肢は無い。」と述べており、インターネット革命に遅れをとっていたインドがまたブロックチェーンの技術に遅れをとると反対派は述べています。
また、国民の請願活動に加えて仮想通貨業界内部からもこの禁止令に対して様々な抵抗する動きがありました。
インドの仮想通貨取引所ゼブペイのCEOであるアジート・クーラナ氏は自身のTwitterで「自分のお金でやりたいことをやる権利のために戦うべきだ。私たちが自分のお金でできることをインド準備銀行が決めることになるかもしれないこの件について多くの声をあげてほしい」と述べています。
他にも仮想通貨業界に関わっている著名人なども自身のSNSを通じてそれぞれ意見を述べています。
暗号通貨禁止令の中で発表された独自のデジタル通貨
インド準備銀行は独自のデジタル通貨の発行について興味を示しているということについても請願書では触れています。
仮想通貨取引の禁止発表と同日に、独自通貨の発行についても公式に明らかにしたことから請願書では現時点で他の動きを止め自分たちでブロックチェーンの技術を研究したがっているのではという蔑んだ意見もあります。
現在もこの問題に対して様々な見方がされていますが、この問題を通してインドでの仮想通貨の法的地位が変わると言うわけではないと言う意見を述べている人も多いようです。
インドでは既にブロックチェーン活用に関して様々な活動が行われています。
インド政府は詳細を明らかにしていないものの、ブロックチェーン技術を利用した様々な銀行業務のサービスの開発なども視野に入れているとされていたり、インドのアーンドラ・プラーデシュ州では現地のファンドと提携しブロックチェーンスタックの開発を目指したりしています。
さらに、ITの質はすでに世界の中でもトップを走っていると言っても過言ではないインドですが、保険業界でのフィンテックの普及率は世界一となっています。決済や送金のサービスにおいても普及率はとても高いのです。
このように決して、インドは仮想通貨やブロックチェーンというものに対して悲観的ではありません。逆に積極的に活用していると言っても良いのではないでしょうか。
今回の禁止令がこれからどのようにインド内で影響及ぼしていくのか、インド準備銀行も再検討する必要がありそうです。