今年に入ってからも暗号通貨のニュースは絶えることはありません。特に暗号通貨のニュースは良いニュースよりもハッキングを受けたり、コインが流出した事件が中心的に取り扱われています。
今年2月頃に発覚したイタリアの暗号通貨取引所である「ビットグレイル(BitGrail)」のハッキング事件もそういった事件の一つです。
この事件はビットグレイル(BitGrail)がハッキングされ、1700万Nanoを流出してしまったというもので、当時の値段で言えば約204億円が流出しました。これは暗号通貨関連の事件では規模の大きい流出事件となっています。
4月27日には、ハッキング被害者であるビットグレイルが、ボネリエレーデ法律事務所を通してイタリアの法律の下、裁判所に破産の申し立てを行ったことが明らかになりました。
これまでに3,000人以上の被害者が債権者と連絡をとっており、債権者に対するケアを行っている最中ですが、大半の人がビットグレイルに対して破産時の資産をすぐにでも会計処理をすることを望んでおり、資産がますます減っていくことが予測されているそうです。
また、被害者によって資産の配分に差がでてしまうことを避けながら、公平に資産を配分しければいけないため、ビットグレイルのオーナーであるフィラノ氏には事件の事実を公開するように求められています。
また、この問題は取引所と通貨を運営する会社、今回でいうビットグレイルと暗号通貨であるNanoの間でも問題になっています。
意見が食い違う両者ですが、Nanoの開発者はフィラノ氏の主張を否定しており、フィラノ氏がNanoのブロックチェーンの変更を行い、彼自身の損失を守るように求めてきたり、取引所としての支払い能力をコミュニティに誤解させていると述べています。
一方フィラノ氏はこれに対して、取引所ビットグレイルには一切欠陥はなく、Nanoのプロトコルに問題があって信頼することはできないと反論しています。
NanoはすでにNanoの投資家から集団訴訟を受けています。アメリカ人であるアレックス・ブロラ氏によって訴訟は起こされ、証券取引法の違反とビットグレイルの信頼性を故意に偽っていたと主張しています。
Nano開発チームに対して、流出してしまったNanoへの救済フォークを行い、新たな暗号通貨を生み出して、被害者となっている人々に補償としてこれらを与えることが求められています。
また、この問題は多くの暗号通貨交換所や暗号通貨事業者を支持しているシルバー・ミラー法律事務所を通して訴訟されており、Nanoにとっては厳しい状況が続くこととなっています。
なお、原告団は今現在分かっているだけでも数千人に上ると言われており、Nanoに対するダメージも深刻とも言えるでしょう。この訴訟の行方によってはNanoの進退が変わってくるといっても過言ではありません。
しかし、Nano財団は4月9日、ハッキング後に破産した被害者全員に対して、代理人を利用したり、法的な利益を追求する機会を提供するため、法的基金に資金援助を行うことを発表していました。
この時点でNano財団はすでに今回のハッキング事件の被害者の600人の代表であるエスペン・エンガー氏とコンタクトをとっていました。エンガー氏とはすでに協力関係にあり、エンガー氏が設立した法的基金に拠出し、被害者への寄付金に上乗せすることも発表しています。
エンガー氏がまとめている被害者らはすでに5万3000Nanoを含めて、30万ドル以上を自力で調達しており、復帰に前向きな姿勢を見せています。こういったことから、Nano財団は被害者に寄り添って、この問題を解決させようとしています。
また、こういった取引所側と通貨側の開発者同士が衝突するという事例が今まであまり少なかったため、今後の対応なども気になるところです。
こういった衝突に関して「被害者の返金を急ぐべきでは」という厳しい声もネットでは上がっています。
3月の中旬にビットグレイルは被害者への返金を約束しており、返金するための方法などもすでに発表しています。新たに独自に作成したビットグレイルシェアーズというトークンを発行することで、損失のうちの80%をカバーすると見込んでおり、残りの20%をNanoによってカバーするということを提案しています。
ただしこの救済を受けるためには条件があり、「取引所に対して訴訟を起こさない」ということに合意している被害者に対して行うということを発表しています。
これに対して反対の声も多く、被害にあったのだからしっかりと対応して全て返金すべきだという考えを持っている被害者が多いようです。
その証拠として、フィラノ氏が2月にツイッターで行った調査によると、7,610人の回答者中、79%の人が「取引所を再建するのではなく、破産することを希望している」という結果が出ました。
結果としてフィラノ氏に責任が重くのしかかっているという現状であり、これからどのような手を尽くして、失った信頼を取り戻していくのかが大きな分かれ目となっていくことでしょう。