フェアトレードが目指すものと現実
過去10年間でコーヒーの価格は2倍になったにもかかわらず、実は生産者が受け取る金額は減っています。
その差額のお金はどこへ行ったのでしょうか。
コーヒー産業はその複雑さで悪名高く、その道中の利益をむさぼる無数の仲介者が存在します。コーヒーの生産者はいつもその端に追いやられていて、一杯のコーヒーから生まれるお金のわずか2%が生産者に届く仕組みとなっています。
このような状況に対抗する、フェアトレードという活動が存在します。
グローバル企業が、生産国から原料を安く買い叩き、販売価格とのマージンを貪っていることに対する運動として始まりました。
「生産者から公正な価格での買い上げ、公平な貿易」を目指しています。
現在ではフェアトレードコーヒーも認知度を高め、イギリスで流通する20%のコーヒーがフェアトレードであると言われています。
しかし、果たして、フェアトレードは本当にコーヒー農家を救っているのでしょうか?
イギリスの作家Conor Woodman氏の『フェアトレードのおかしな真実』(英治出版)によれば、フェアトレードコーヒーの実態は公平には程遠いとも考えられています。
フェアトレード協会(FLO:FairTradeOrganization)はコーヒーの公正な最低価格を1キロあたり2.97ドルと定めています。
これは生産者の保護のため定められた価格で、フェアトレード事業者は、市場価格が暴落したとしても、この価格以上でコーヒー豆を輸入しなければいけないと定められています。
しかし、ここ十年、この価格を下回った年はありません。
つまり市場価格に、1キロ当たりたった44セントの認証料金を上乗せさえすれば、フェアトレード認証のコーヒーが買えるということになってしまうのです。
マクドナルドは、フェアトレードマークを取得したことによりコーヒーの売り上げが25%伸びたというからこの認証料金は安いものだといえるでしょう。
もとより、飲料のコーヒーとしての商売は原価率がとても低いのでフェアトレードマークにかかる費用は大したものではありません。
フェアトレードにも存在する不公平
2011年、国際市場では、タンザニア産のコーヒー豆が5ドル/キロを上回る史上最高値を記録していました。
しかし、フェアトレードに参加する農家が受け取っていたのはフェアトレード協会が公正な最低価格」とする1キロあたり2.81ドルをはるかに下回る1キロあたり1.38ドルだけだったのです。
なぜこんなことが起きるのでしょうか。
認証を受けるためには、フェアトレード協会に登録料を支払う必要があります。
当然のことながら、すべての小さい農園が登録することはできず地域ごとの組合を作って加入しています。
さらに、海外の会社との価格交渉などでは大きい団体の方が有利なのです。
その結果、地域で作られた組合の有力者が利益を得て、小規模生産者の手には公正価格の半額以下しか届いていないのです。
加えて、フェアトレードは自分の土地を持っている生産者にしか許可されません。
しかしもっとも困窮した人は土地が持てないのです。このプログラムが、プログラムが最も求められている場所を無視しているとも言えるでしょう。
Moyee Coffeeがフェアトレードを変える
アイルランドに拠点を置くMoyee CoffeeはFairChain財団によるブロックチェーン技術と協力して、効果的なプログラムを作ろうとしています。
もっとも貧しい地域のコーヒー農家の生活を助けるとともに、フェアトレードプログラムの欠点をも克服するものです。
このプログラムによりお金がどこへ行くか決めるのは消費者次第になります。
消費者は安いコーヒーも買えるし、スターバックスなどのブランドにお金を払うことも、そして実際にコーヒーを育てた農場にお金を渡すこともできるようになります。
ブロックチェーン技術はコーヒー産業をひっくり返すことができるでしょう。
フェアトレードプログラムでは達成しえなかった“透明な貿易“という革命が引き起こします。
彼らは2017年11月からエチオピアのコーヒー農家とアイルランドのオフィスで飲む一杯のコーヒーをつなぐプロジェクトを始めました。
<後編へ続く>