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暗号通貨によって、現実のものとなる海上の独立都市とは (前編)

暗号通貨によって、現実のものとなる海上の独立都市とは (前編)
2018年10月22日

「この国には何でもある。だが希望だけがない。」

上記のショッキングな一文は、2000年に出版された村上龍氏の小説「希望の国のエクソダス」に出てくる少年のセリフです。

この小説では、作中の日本に不満を持った中学生が北海道で広大な土地を購入し、自治を始めます。少年は、地域通貨エクスを発行し、それによって労働や教育を賄うという、日本にありながら日本とは離れた自治圏を作り上げるのです。

この小説のことを思い出すたびに、この地域通貨はブロックチェーンのことを予見していたのではないかと考えます。国家から独立した経済圏を作る、それはブロックチェーン技術から描ける将来の一つです。

 

ブロックチェーンが実現する新しい経済圏

 

ブロックチェーンという技術をもって、人は自由に価値を作り出せるようになります。個人でのICOも技術的には可能になりました。しかし、現在の日本ではICOでお金を集めることに非常に高いハードルが課せられているため、海外の取引所にてICOを行っています。

現在は各国ともに暗号通貨に関する法整備が追い付いていないため、せっかくのブロックチェーン技術も十分には活かされていません。全ての国の法規制を外れてブロックチェーン技術を活用するために何が必要か。それは、独立です。冒頭に挙げた小説ではありませんが、これまでの法規制に縛られない自治領を作ればよいのです。

 

伝説的経済学者の孫とPayPalマフィアが企てる自由国家

 

現在、フランス領ポリネシアの海上に、Seasteadと呼ばれる浮遊構造上の永住地を配置し、独立洋上国家を設立する計画が進行しています。

この計画を実行しているのは、Blue Frontier社というスタートアップの会社です。Blue Frontier社は、Seasteading Institute社のエグゼクティブディレクターや、ベラルーシ人実業家、ポリネシアの元閣僚、フランス人起業家により2017年に設立されました。

計画のキーとなる洋上建築を構想しているSeasteading Institute社こそ、ノーベル経済学賞を受賞している経済学者のMilton Friedman氏の孫であるPatri Friedman氏が、PayPal創業者のPeter Thiel氏の出資を得て共同設立した研究機関なのです。

 

Seasteading Instituteの歩み

 

この研究所は1981年に海兵隊員のKen Neumeyer氏が「Sailing the farm」という本で語った、帆船上での持続可能な生活に端を発します。20年後この本より着想を得たPatri Friedman氏がSeasteading構想を立ち上げ、億万長者であるPeter Thiel氏からの出資を受けることでSeasteading Institute社を共同設立しました。

2009年Peter Thiel氏は同じくPayPal出身であるElon Musk氏の火星居住と関連付けるように、こう発言をしています。「将来の居住地として、サイバースペースと宇宙空間以外に、洋上という候補地がある。」

創立以来Seasteading Institute社は、洋上の自由経済圏を作るため、建設技術の研究を進めるとともに、洋上都市の候補地を探してきました。

 

建築技術と環境技術

 

海上都市の建物は、水位の変化に影響されない浮力のある素材で基礎部分を作り、地球温暖化による水位上昇にも対応しています。波や台風などの影響に耐える構造設計や廃棄物・排水は一切出さない循環システムはもちろんのこと、サンゴ礁を保護できる技術も研究しています。

そして持続可能エネルギー(波エネルギー発電・太陽発電)や材料科学、藻類ベースの食料や燃料、海水空調(SWAC)、淡水化、海洋教育のインキュベーションハブとなることも期待されています。

2016年にはオランダ、ロッテルダムの港にFloating Pavilionというプロトタイプを建築し実証実験を始めました。この実験では再生可能エネルギーで動力をまかない、塩分のあるロッテルダムの水を収集して浄化し、安全に環境に戻すことに成功しています

入居のスタート時には、1平方メートルあたり約5500ドル(620万円)と高額な入居費用が掛かりますが、住居者が増えていくにしたがって費用は抑えられる見込みです。長期的には中所得者が居住できる水準まで、費用を抑えることを計画しています。

 

ポリネシアから始まる洋上経済圏

 

洋上に居住しているとは言え、現在の国際法では、その居住者は200海里以内にある最も近い国家の法律に従う必要があると定められています。この枠組み内では、独立した経済圏を作ることはできません。この点に理解を示してくれたのがポリネシア政府でした。

ポリネシアは現在、温暖化による海面上昇のため、水没の危機があると言われています。そのため、政府は洋上都市の設計に関して協力的な姿勢を見せています。また、Blue Frontier社も住居部分の25%をポリネシア人に優先的に提供すると発表しています。

計画スタート時の住民は250名を予定していますが、ユニットを組み合わせることで住居ユニットも増やせるので、これ以上の規模になることが予想されています。

ポリネシアでの実証実験が成功した場合には、同じく海面上昇で危機的状況にあるミクロネシアやバングラデシュの危機的状況を救えるかもしれません。

後編では、海上都市が現実に出来上がった時、どのようなものになるかをご紹介します。