カナダ国境管理局(Canadian Border Services Agency、以下CBSA)は、貨物輸送における事務作業の効率化のために、売上高世界一の海運企業でA.P. Moller-Maersk社とIBM社が開発した「Trade Lens」という物流管理ブロックチェーンを導入すると発表しました。実証実験の場所は、同国2位の取引貨物量を誇るモントリオール港を予定しています。
Trade Lensは、今年8月に、港湾物流における事務手続きの効率化およびペーパーレス化を目的としてリリースされたサービスで、既にシンガポールやロッテルダム、カナダではハリファックスなどの港の税関や、企業では世界レベルの物流チェーンであるオランダのCEVA Logistics社などで導入されています。
CBSAの責任者であるJohn Ossowski氏は、「迅速かつ信頼性の高い物流管理ができるようになれば、それは港湾事務作業の効率化と言った目標だけでなく、カナダ経済全体にも良い影響を与えるだろう。」と語っています。
あくまで参考のデータではあるものの、アメリカで行なったTrade Lensの実証実験では、輸送時間を40%短縮し、コストを数千ドル削減したという報告もあります。
マサチューセッツ工科大学の運輸・物流センターのブロックチェーン研究チームを率いるInma Borrella氏は、「海洋貨物はただでさえ技術導入が遅れている分野だけに、競合他社が一致団結して、目新しい同一の管理システムを導入できるかが最大のハードル。」としながらも、「貨物の管理が従来の書類ベースのものからブロックチェーン上での一括管理に切り替わっていくことで、これまで海運業界につきまとっていた様々な問題が明確になる。例えば、貨物の損害や紛失の際に誰が責任を負うかなどだ。」と述べています。