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ブロックチェーンアイランドを支える金融サービスプロバイダの動き

ブロックチェーンアイランドを支える金融サービスプロバイダの動き
2019年4月25日

ブロックチェーン仮想通貨といった新たな技術の導入については、その規模の大小を問わず、世界の各地で見られています。

その中でもマルタ共和国は一歩抜きん出ていると言えます。

マルタは造船やタバコで栄えた地中海の小国で、文化遺産である巨石神殿など観光にも適した国ですが、それ以上に目を引くものが、マルタ政府の掲げた「ブロックチェーン・アイランド」というキーワードです。このイメージ戦略は功を奏し、船や観光客だけでなく、多くのブロックチェーン関連企業やICOを考えている人々が集まってきています。

 

マルタの首都バレッタに本社を置く、マルチサービス金融プロバイダであるPapilio Services Limitedは、マルタ政府の金融サービス当局から金融サービスプロバイダとしてのライセンスを受けています。同社は、ICOを含む様々な顧客のニーズに対してアドバイスを行なっています。

同社の役員であるChris Armstrong氏は、2018年に参加した仮想通貨やブロックチェーンの関連のイベントの多くで、「ICOの実施や仮想通貨関連のサービスを提供しようとしている企業の多くが、『適切な規制を制定してほしい。それを遵守していることが顧客に提示できれば、自社のサービスやICOの信頼性を担保できる。』と言う理由で規制を望んでいるのが見て取れた。」と語っています。

 

こうした企業の意向は「ブロックチェーンアイランド」を標榜する政府側も認識しており、ブロックチェーンに関する3つの法案が昨年6月に国会を通過し、翌7月の首相承認を経て、同年11月1日に施行されました。

3つの法案の1つ、仮想金融資産法(Virtual Finance Asset Act、以下VFA)はICOに関する規制について定めた法で、ICOで資金調達を行おうとしている企業に所定の内容が盛り込まれたホワイトペーパーの公開を義務付けたり、ICOを始めとした投資アドバイス業を含む全ての仮想通貨取扱業者に認定試験を課すものです。

また残り2つの法案は、革新的技術協定及びサービス法はブロックチェーン企業の保護を目的としたもの、マルチデジタル革新権法は仮想通貨やブロックチェーン関連の企業やサービスに対して、政府が規制できる権限を付与するものです。

 

法案によって、企業の提供するアプリケーションやフレームワークを監査する機関ができたことで、ブロックチェーンや仮想通貨事業を行うのであれば、この機関の技術的な認定を受ける必要こそあるものの、認定を受けることでお墨付きをもらえることになります。

前述のArmstrong氏は「この法案によって、企業が提供する『サービス』を第三者的な視点で評価することができるようになったことで、例えば、仮想通貨取引所を運営しているのであれば一度は考えるであろう『自社のセキュリティは顧客から預かっているデジタル資産を守る上で、十分と言えるレベルの堅牢さがあるのだろうか?』という疑問に対しての答えがわかるようになった」としています。

 

今回の法案は、ブロックチェーンや仮想通貨のサービスを行なっている企業と銀行との問題にも解決策を提示しています。

AMLなどの問題から、仮想通貨関連の企業が銀行口座の開設出来ないというニュースは枚挙にいとまがないですが、これは銀行側がブロックチェーン関連企業と仮想通貨関連企業を区別出来ていないことに起因します。また、報告によれば、口座開設の要望はブロックチェーン関連事業者からのものが大半とされています。

VFAでは「ICOの発行者は当局によって選任された信頼できるVFA代理人を、規制当局との仲介人として置かなければならない」としているため、VFA代理人の有無で口座開設を希望する企業の判別を銀行が出来るようになり、ひいてはブロックチェーン関連事業者が口座開設出来ることに繋がると言えます。

 

Armstrong氏は金融プロバイダとしての観点から、VFA代理人について以下のように語っています。

「VFA代理人を置いたことによって、ICOを行うまでに行う発行者側がすべきことが明確になりました。従来の規制のない環境では、発行者はICOを行う際に弁護士や金融プロバイダーと頻繁に連絡を取り合う必要がありましたが、そうした手間がなくなったことは大変喜ばしいことです。また、VFA代理人は発行者に対して、ICOで発行するものが何らかの機能や権利と紐付けされたトークンなのか、そうではないのかということや、前者の場合はその特性や定義を明確にさせることを要求するため、実態が伴っているとは言い難いプロジェクトなどを締め出すことが出来るようになりました。

トークンの発行者と出資者の両方を保護するために、規制の内容はある程度しっかりしたものである必要性がありますが、この法案はそれを十分に満たしているものと言えます。所定の手続きを踏むには多少の時間を必要とするものの、それによって得られるものを考えれば投資家や発行者側としても十分に納得できる、歩み寄った内容であると言えるでしょう。」

 

同氏は、他にも、今後マルタでICOを検討しているのであれば、トークンがどういった属性のものか明確にすることは必須事項であると語っています。

仲間内で記念に発行するトークンなどであればこうした規制に縛られる必要はありません。しかし、それが特定の種類の資産に当たるトークン、例えば何らかの投票権や配当を受け取る権利などを有しているトークンであった場合は、株主の権利と類似と判断され、金融サービスに関する規制や銀行法に則った処理を行う必要があります。

こうしたマルタの取り組みはまだ十分に浸透しているとは言い難いため、そうした準備のないままICOを行おうとする人はまだ存在します。そのため、Papilio Services社は各地で開催されるBlockchain Expoなどのイベントに出展することで、周知活動を予定しています。

 

ブロックチェーンや仮想通貨の分野に限った話ではありませんが、より専門的な分野に携わっているが故に一般的な視点を失うということは往々にして起こり得ます。マルタは「ブロックチェーンアイランド」を標榜して最先端を身を置きながらも、一般的な視点を失うことなく、地に足のついたスタンスを維持しています。

 

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