ここ10日間のうちに約1.5倍と急騰しているイーサリアムですが、全世界に流通しているイーサリアムのうちで、いわゆる「クジラ」が保有する割合も再び上昇傾向にあります。
ブロックチェーンの分析調査を行っている企業、Chainalysis社のレポートに拠ると、「クジラ」と呼ばれる層が保有するイーサリアムの割合は2016年の47%から年を追うごとに減っており、2018年には全世界に流通しているイーサリアムの量の30%を割り込むまで減っていました。しかしながら、2019年5月1日の時点では30%を超え、33.6%を記録しています。
また、保有量の順に上から500位までの内訳を見てみると、そのうち124はイーサリアムプラットフォームを利用したサービスを行っている事業者、残りの376が「クジラ」によるものでした。これはイーサリアムの時価総額換算で約90億ドル、日本円にして1兆円に当たる金額です。
全世界流通量の保有割合こそ2018年から2019年にかけて上昇しましたが、トランザクションに占める割合は減る一方で2019年では7%までまで減っています。今回のレポートでは、「クジラ」の動向がEイーサリアムの価格変動の要因となっているのかどうかも併せて調査しています。調査する項目は
- クジラが取引所で売却した時、イーサリアムの価格変動は起きるか
- クジラが取引所で購入した際、イーサリアムの価格変動は起きるか
- ビットコインと価格変動とイーサリアムの価格変動はリンクするか
の3つで、それぞれ2016年から2019年までのデータを元に行いました。
まず、1つ目の取引所で売却した場合、ボラティリティにこそ影響を与えましたが、価格変動の要因とはなり得ませんでした。
2つ目の購入した場合では、価格とボラティリティのいずれにも影響を及ぼしませんでした。
最後に3つ目のビットコインの価格変動では、ビットコインが1%上昇した場合、その翌日にイーサリアムが1.1%上昇するといった傾向が見られました。
これらの結果を総合すると「クジラ」はその保有しているイーサリアムの大部分を全く動かすことなく自身のウォレットに入れたままでは、価格に与える影響は極めて小さいということが言えます。
しかしながら、取引所に現れないからこそ、ひとたび大量売却などで取引所に現れた際には、ボラティリティは影響はとても大きいものになります。
こうした動きは仮想通貨に限ったものではありません。S&P500(ニューヨーク取引所やNASDAQなどに上場している代表的な500銘柄の株価を元に算出されるもの)でも、取引量の異常な増加はボラティリティにこそ影響を与えるものの、株価にはそこまで影響を与えていないことが報告されています。
仮想通貨は通説では「非中央集権化」ということが特徴の1つとして挙げられていますが、少なくともイーサリアムにおいては目立った影響を及ぼさないながらも376頭のクジラが中央に居座っているようです。