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CEOの死とともに闇に消えた160億ドルの仮想通貨の行方

CEOの死とともに闇に消えた160億ドルの仮想通貨の行方
2019年7月1日

カナダの取引所のQuadrigaCXで仮想通貨を所持していた人からすれば、この半年は悪夢のような時間だったかもしれません。

 

事の始まりは、2018年末にカナダ国内最大の取引所の1つ、QuadrigaCXのCEOのGerald Cotten氏が急死した事に端を発します。

同取引所はハッキングなどのリスクを避けるため、顧客資産をコールドウォレットで管理していました。そしてこのウォレットのアクセスキーをCEOのCotten氏一人で管理していため、一切の顧客資産を引き出すことが出来なくなりました。引き出せなくなった顧客資産の総額は、2019年1月時点で1億9,000万カナダドル、当時のレートで約160億円にもなります。

そんな中、同取引所は1月末に、カナダの最高裁判所に債権者整理法に法って債権者保護の申請を行いました。

あくまで「会社に破産を回避する機会を与えるためのもので、債権者が支払いを受けられるようにするための措置」ではありますが、これに前後してユーザーに対する事前通知なしに取引所のサービスを停止したため、「破産したのではないか?」といったような情報が錯綜しました。

地元紙の中には、「コールドウォレットの暗証番号がわからないから引き出せない」のではなく、「そもそも取引所のウォレットの中に、仮想通貨が入っていないのではないか?」という指摘も出ていました。というのも、QuadrigaCXのユーザーが資金を引き出せなくなったのは今回が初めてではないからです。

 

2018年の1月にカナダの5大銀行の1つ、CIBCがQuadrigaCXの口座の一部を凍結しました。

理由としては、同取引所が「個人から預かっている」としている資産の所有者が不明であったためです。取引所側はこの措置に不服とし、銀行側を訴える事態にまで発展しました。しかし、最終的に裁判所から下された判断は、「実際の所有者」に返還ができるように、裁判所の口座に移すことを命ずるものでした。

 

そういった背景もあり、2月に債権者保護の申し立てをしたものの代わりの提携銀行が見つからなかったために再編は失敗に終わり、4月にはビッグ4の1つであるErnst & Young(以下EY)によって破産手続きが始まりました。これにより

  • QuadrigaCXは、過去3年に渡って正式な会計記録を保管していなかったこと
  • 監査を受けずに多額の資金移動を行なっていたこと
  • 「顧客資産を保管していた」とされていた6つのコールドウォレットのうち5つは、2018年4月から使用されておらず、残り1つもQuadrigaCXのホットウォレットと他の取引所間で仮想通貨を移動させる為にしか使われていなかったこと
  • QuadrigaCXの保有していたうちの相当量の仮想通貨が競合他社の取引所で売却され、CEO夫妻の個人口座に送金されていたこと
  • CEO夫妻が、不動産やプライベートジェット等を購入していたこと
  • QuadrigaCXが預かっていた顧客の資産2億1,500万カナダドル(約180億円)のうち、回収出来たものは3,300カナダドル(約27億円)だけだったということ

といったことが明らかになりました。

 

「事実は小説よりも奇なり」を地で行くこの一連の事件は、カナダのみならず世界中の仮想通貨保有者の関心を引き、「一部の顧客情報は偽造されたものだった」や「CEOの死自体が偽装されたものだった」といった真偽不明な噂がまことしやかに流れました。米国の大手取引所Krakenなどでは「消えた仮想通貨に関する有力な情報の提供者には1,000万ドルの賞金を出す」といった動きを見せています。

あまりに異様な事件だったためか、今年4月に公開された仮想通貨をテーマにした「Crypto」という映画のレビューサイトでは、この事件を引き合いに出しながら映画を「現実以下の内容で凡庸」と切り捨てるようなレビューが散見されたほどです。

 

真相は未だに不明な点がありますが、「取引所に預けていたために引き出せなくなった」ということは明らかになっています。自身の資産を防衛するためにも、保管先の選定は慎重に行うことはもちろん、そのアクセスキーの管理を徹底する必要があるかもしれません。

時系列に沿った事件の流れは以下の通りです。

2018年  1月 CIBCが実際の所有者が不明なQuadrigaCXの口座の資金を凍結する

2018年10月 QuadrigaCXがCIBCを訴える

2018年11月 裁判所がQuadrigaCXに、実際の所有者に返還できるよう裁判所の口座に資金を移すよう命令する

2018年12月 QuadrigaCXのCEOがボランティア活動で訪れたインドで急死したと報じられる

2019年  1月 QuadrigaCXが最高裁に債権者保護の申し立てを行う

2019年  1月 QuadrigaCXが取引所のサービスを停止

2019年  2月 裁判所がEYを監査の第三者機関として任命する

2019年  2月 地元紙に「そもそもコールドウォレットに仮想通貨は入っていないのでは?」という報道が出る

2019年  4月 QuadrigaCXの再編入札が失敗し、破産手続きに入る

2019年  4月 相当量の仮想通貨が他社経由で現金化され、CEO夫妻の個人口座に送金されていたことが判明

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