「メルセデスベンツ」のブランドを所有するダイムラー社が、仮想通貨のウォレットを搭載した車の開発を行なっていることを発表しました。
「ベンツ」と「仮想通貨」という組み合わせのニュースは以前にも報じられていましたが、あくまでビットコインの高騰が注目されている時期に、決済手段としての導入が検討されている内容でした。
今回は車のシステムにブロックチェーンや仮想通貨といった技術が組み込まれています。
このシステムは、ダイムラー社の金融部門であるブロックチェーンファクトリーで誕生しました。
同社は、従来の個人が所有するものとして車を提供するだけでなく、購入後のカーシェアリングやUberなどのライドシェアリングなどのモビリティサービスの拡充に力を入れており、複数のスタートアップと協力して様々な商品を開発しています。車にブロックチェーンが搭載は、こうしたモビリティサービスの普及を見据えたものです。
ブロックチェーンの導入は新規のサービスだけでなく、既存のサービスにも影響を与えます。自動運転などに必要な位置情報の取得やスピードの管理といった技術は、既存のドライブレコーダーより優れた改ざん不能で信頼性の高いものになります。
また、ブロックチェーンを搭載していることから、車はウォレットの機能も有しているため、謂わば自走するハードウェアウォレットとも言えます。
ダイムラー社の「走るウォレット」は将来的な構想で現在開発中の案件ですが、自動車産業のサプライチェーンへのブロックチェーンの導入は既に始まっています。ともすれば複雑化しサプライチェーンを透明化することによって効率化を進めるだけでなく、調達のプロセスなどに改革を起こすことを目的として行われています。
同社の仮想通貨の取り組みは他にもあり、2018年2月には独自通貨の「Mobi coin」のプロジェクトがスタートしています。このプロジェクトは、環境に配慮した運転を奨励するもので、アプリを通じてドライバーの運転データが蓄積され、優秀なドライバーにはMobi coinを報酬として支払うというものです。
報酬のMobi coinは、ダイムラー社が開催するメルセデスカップの観戦チケットなどの、モータースポーツに関する特典が付与されるとしています。
仮想通貨やブロックチェーンを組み込んだビジネスモデルは、ダイムラーの他にもポルシェやBMWといったドイツ企業が乗り出しており、既存の産業に仮想通貨を決済手段としてではない方法で組み込むというものでは、ダイムラー社の動きは英国のジャガー社がダイムラー社に先んじて発表しています。
前世紀の代表的な産業だった自動車業界は、21世紀に新たなマーケットとして仮想通貨業界を見据えています。
関連記事:車と仮想通貨の結びつきとは!?