Stable coinというと米ドルにペッグしたTetherが有名ですが、日本円にペッグしたもの、ユーロにペッグしたもの、人民元にペッグしたもの、原油価格にペッグしたものと様々なものがあります。
先日、ゴールドに連動したPAX Gold(PAXG)というstable coinが発表されました。しかし、ゴールドに連動した仮想通貨は今回は初めてではありません。
2016年には「ゴールドをデジタル管理するためのシステム」としてDigiXというプロジェクトが発表されました。このプロジェクトは1グラムのゴールドとペッグしているDGXというトークンと、システム全体をサポートするDGDというトークンで構成されています。
このシステムにより、ゴールドの量・ゴールドの所有者・第3者機関による保証といった情報がブロックチェーン上で管理されるため、採掘から誰かしらが所持するまでの経路の全てが透明化され、実際にゴールドを所持して資産状況を知ることができます。
もちろん発行者は仮想通貨の価値の裏付けとなるゴールドも所有しています。ゴールドの管理はシンガポールの資産管理会社The Safe House SGが行なっており、現地でゴールドとDGXと交換することができます。
PAXGもDGXと同様に、ゴールドのトレードの促進と所有権の透明化を目的としたものです。3年も先行したプロジェクトがあるにも関わらず、PAXGが発表されたことにはいくつか理由があります。
1つはPAXGはニューヨークの金融当局から認可を受けていること。2つ目に発行元のPaxosが運営する自前の取引所があること、3つ目はDGXに比べサイズが大きいことです。
1つ目の規制当局から認可を受けているという点は、いくら素晴らしいエコシステムを構築していたとしても実態が伴わなければ2017年に行われたの多くのICOのように、絵に描いた餅で終わってしまいます。規制当局の認可を得たということは、一定以上の信頼性が担保されたといえます。先行のDGXは特にそういった当局の許認可を受けたわけではないため、PAXGは法令に準じた世界初のデジタル版のゴールド商品であると言えます。
2つ目の自社での取引所の運営により、そこでPAXGを米ドル建てで買うことができます。一方DGXはゴールドとの交換になり、場所もシンガポールと限定されてしまいます。
3つ目の大きさについては、DGXは1グラムのゴールドを1単位としていますが、PAXGは1オンス(1オンス=28,3485グラム)を1単位としています。現物をやり取りしづらいゴールドをデジタルで管理するという目的があり、発行枚数の上限があることを鑑みれば、1単位のサイズは大きいほうが融通がききます。
ゴールドは依然として人気の高い投資先であり、その市場規模は960兆円とも言われています。
PaxosのCEOであるCharles Cascarilla氏は、
「今回のゴールドのデジタル化は、それらの市場にいる投資家を仮想通貨の市場へと引き寄せるという側面もある」
と語っており、ゴールドに限らず様々な金融商品をデジタル化していきたいと展望を述べています。
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